Albertina Walker (1929 – 2010)

ゴスペルの女王と呼ばれたアルバーティナ・ウォーカーが、米国時間今朝4:30頃天に召された。

1950年代に、今や伝説と化したゴスペルグループ『キャラバンズ』を結成、ジェームス・クリーブランドシャーリー・シーザー、ドロシー・ノーウッドといったメンバーを加えながら、将来の大御所となるゴスペル歌手を発掘していった。

クリントンやブッシュ息子といった米大統領だけではなく、南アフリカのマンデラ大統領のためにも、歌ったことがあるという。

そういうイベント的なことなんかよりも、クリーブランド牧師と共にGMWA(ゴスペル・ミュージック・ワークショップ・オブ・アメリカ)を発足したり、各非営利団体に寄付をし続けたり、黒人だけではなく、アメリカの文化に貢献し続けた人だった。


数年前のステラー賞でのキャラバンズ再結成の際にも、正に「大御所ここにあり」と言わんばかりのコーラスを披露してくれたりして、ちょっと前まで、テレビで元気そうな姿を見せてただけに、今朝のニュースにゃ驚いた。

自称ゴスペルファンの日本人は多い。もしその中で、まだ聴いたことないという人がいたら、是非キャラバンズを聴いてみてほしい。

RIP…

“Total Praise” @ Carnegie Hall

実はタイトルは、『Total Praise』じゃなく『A Night of Inspiration』とするべきなんだが、それは後述として…。

今晩カーネギーホールでゴスペルコンサートが行われた。一番安い席が$13.50だったんで、嫁さんや友達と、四人で行ってきた。

とにかく、色んなアーティストが出演して面白かった。バックのコーラスは、ニューヨーク近辺の教会のクワイヤによる構成で、殆ど黒人なんだが、一組だけクイーンズの韓国人教会の聖歌隊も入ってて、ちょっと意外だった。

最初に出たのは、なんとマイケル・マクドナルド。元ドゥービー・ブラザースのメンバーで、白人だし、昨年クリスチャン系のアルバムを出したとは言えゴスペル歌手として知られてるわけじゃない。だが、殆どが黒人っつう観客を沸かせてたなぁ。一曲で終わったけど。

二番目と三番目には、なんと今回目当てにしてた人達が、さっさと出てきてしまった。ビービー&シーシー・ワイナンズに続き、シャーリー・シーザー。これまた一曲ずつ。

続いて、あまり好きじゃないけどヘザカイア・ウォーカーとか、色々出てきて一曲ずつ歌って、休憩。なんだ、みんな一曲ずつで、最後に全員参加というオチか…と、なんとなくがっかりしてた。

だが後半になると、昔プリンスと共演して現在はゴスペルでの仕事が多いシーラ・Eが場を盛り上げる。そして再度ビービー&シーシーやシャーリー・シーザーも出てきたりで、更に盛り上がる。カート・カーやフレッド・ハモンドも出てきて、とにかくゴスペル界の大物の連続だった。

最後はリチャード・スモールウッド。ピアノソロに続き、再びマクドナルドが出てきて、スモールウッドによる永遠の名曲『Total Praise』を歌う。途中から、全クワイヤが参加し、出演者も勢揃い、観客にも促しての大合唱。出演者も観客も、殆どが黒人という中で、白人のマクドナルドにリードをさせ、それに対してみんなが盛り上がってたという事実に、感動した。これまで何度もゴスペルコンサートに来て、神の目には人種など関係ないはずだと思いながらも、毎回なんとなく人種間の壁を感じてたが、今日はちょっと違って、なんかいい気分だった。

$13.50でこれだけ楽しめるってのは、やっぱ日本ではなかなかありえんよな。

ちなみに『Total Praise』を知らない方はこちらを。音質も画質もよくないけど、やっぱカバーよりオリジナルで紹介したい。

Down by the Riverside @ Tarrytown Music Hall

時々、もしかしたら自分はアメリカが好きなんじゃなくて、ニューヨークが好きなだけなのかも…って思うことがある。今や世界を仕切ろうとしてるアメリカ帝国の大部分は、物事の見方の狭い連中が多い田舎なわけで、そんな中、人種の坩堝になっているニューヨークなら、世界中から集まってる色んな人達と接することができるし、色々な文化を、ほんのちょっとさわる程度だが、体験することができ、物事に対しても色んな見方を学ぶことができる。

今夜は、嫁さんと、友人の四人で、近所のシアターで行われた、ブランド・ボーイズ・オブ・アラバマとプリザベーションホール・ジャズバンドのジョイントコンサート『Down by the Riverside』に行ってきた。

前座を務めたプリザベーションホール・ジャズバンドは、ルイジアナ州ニューオリンズに行ったことのある人や興味のある人なら必ず知ってるはずの、今やフレンチクォーター最古の建物の一つとなっているプリザベーションホールで演奏を続けるジャズバンド。自分もテキサス時代何度かニューオリンズまで運転して聴きに行き、それが自分の信仰に戻るきっかけとなったのは、このページにも書いてるが、今回は15年以上ぶりの生演奏。当時はニューオリンズ・ジャズ界の重鎮、ウィリー(クラリネット)とパーシー(トランペット)のハンフリー兄弟も健在で、メンバーの殆どが高齢だったが、多少平均年齢が若返った今でも、楽しい演奏を聴かせてくれた。最後はもちろん『聖者の行進』。

ブランド・ボーイズは、1939年にアラバマ州で結成された、盲目の歌手達によるゴスペルグループ。結成当初は四人だったが、その後ジミー・カーターが加わり、ファイブ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマとして活躍する。オリジナルメンバー四人のうち、健在なのは一人だけで、彼も数年前から一緒に活動はしていない。結局今じゃ昔のメンバーはカーターだけになってしまったが、それでも他の二人のボーカルとドラマーも盲目の爺さんで、その名に恥じない(?)活動を続けている。

カーティス・メイフィールドの『People get ready』や、『朝日のあたる家』のメロディで歌った『アメージング・グレイス』などを歌ってくれて、期待どおりで感動した。

一番印象に残ったのは、途中でジャズバンドも加わって演奏した『I’ll fly away』。ステージから「イエス様のために、死ぬまで歌い続けるぞ。」と言い切った爺さん達が、「自分が死ぬ時、ハレルヤ、自分は飛び去って行こう」と、天国へ行くことに希望を持ち、楽しく歌ってる姿を見て、どうしても母ちゃんのことを思い出さずにいられなかった。新しい年も迎えたし、いつまでの悲しんでるわけにはいかないだろ、って言われてるような気もした。

ルイジアナもアラバマも南部で、ニューヨークとは全然違うし、絶対住みたくないとこだ。でも、こういう音楽を聴いてると、やっぱ自分がすきなのは、ニューヨークも含めたアメリカなのかもなぁ…とも思えてくる。

そして、こういう素晴らしい音楽の中に生きていけるってことを感謝し、ここから何かを学ばなければいけないんだと再度実感した。